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麦
○むらさきの麦や出で来て鳩ヶ窟
春
○神々も盗みて春のチョコレート
◯侘助や語りつくせぬこともあり
◯侘助やなにものにともならずけり
◯侘助になつかしきかな手鞠唄
郭公
○閑古鳥こころゆくまできいてをる
○郭公や言の葉なくて行き申す
紅梅
○紅梅に待つべき恋というなかれ
○紅梅や跳ねたる声のいじらしく
桜
○いとしみて桜にちかき庵かな
鶏頭
◯鶏頭や言葉もいらぬ名もいらぬ
◯鶏頭の深みにかかるあしたかな
◯姿なく鶏頭ありし宿やかな
◯鶏頭や悲しき人を呼びとめる
◯鶏頭や幼き子等の前に立つ
◯鶏頭のあらはれて浮くむかしかな
梅
○梅散らば里に帰るや安倍の人
○梅が香に何や問うたる安倍の人
清水
○奥六郡清水となりし命かな
○まつろわぬ消えて清水や悪路王
◯彼岸花化けて狐の道となり
◯天上の塊落ちる曼珠沙華
◯かたまりの心の内よ曼珠沙華
◯天上にとどけとばかり曼珠沙華
◯それぞれのさぐる心や曼珠沙華
◯曼珠沙華錆のごとくに浮き上がる
○中華そば立つ路地裏に曼珠沙華
女郎花
◯女郎花語らぬことのあはれかな
◯待人の夢にすぎぬか女郎花
牡蠣
○牡蠣むくや爪に小石の吹きつける
桜
○豆腐屋のいつもの町も桜かな
◯レモン噛みけふ爽やかに命得る
◯街角に跳ねたレモンや石畳
◯汁飛んで光るレモンや風の中
◯対面す愛はレモンの街角に
◯対面し愛はレモンの小径かな
◯向かい合ふ愛はレモンの思うべし
◯おくれたる愛にレモンの光かな
○尖らせつアイスクリームやとけてゆく
○なめてをるアイスクリームや感じてる
○告白にアイスクリームを見る目かな
○独身のアイスクリームや寝てる人
○寝る人のアイスクリームや手に入れる
○プライドやアイスクリームは過去の恋
○プライドやアイスクリームは過去の人
○付き合ってアイスクリームやあせらずに
○待ち合わせ渋谷と言えずアイスクリーム
○離婚してその日にたべたアイスクリーム
○誕生日滲んでゆくやアイスクリーム
○気が強く気を許すのはアイスクリーム
○やさしいの神様といいアイスクリーム
○手荷物や寄り添いたべたアイスクリーム
○セックスはたった一度のアイスクリーム
○アイスクリーム雲の間に挟まれり
○アイスクリーム長き睫毛の女かな
○アイスクリーム受けて電車の流れ行く
○月替りアイスクリームやひとりでも
○突き刺さるバーにポップな氷菓子
○風味ごとアイスキャンディ懐かしき
たしかあるかな◯春雷に恋した頃の想いかな
栗
◯山を背に褒美といふか栗の飯
毒茸
○毒茸や月明かりにて化粧する
◯毒茸や間違えぬよふ息をのむ
◯毒茸や月の化粧といふべきか
茸
◯寝息立つ茸やおとぎの世界かな
◯茸山や星に息吹きと思はるる
◯茸山や星案内の玉手箱
◯近づけるほどに茸の声がする
○たつぷりのきのこの出汁に温まる
雪だるま
○雪だるまいつまで恋のとけるまで
息白し
○改札の人それぞれに息白し