三日月
○新月や道を歩みて母の影
○新月や道を歩みて月並みに
○三日月や歌切れ里にをくを識る
名月
○名月や大動脈の水の穴
○荒壁やともに少なき今日の月
○白象やふくふくとして今日の月
○名月や立どまりけりかすかな音
○名月に転がり落ちぬ鼠かな
○十五夜に婚礼となる鼠かな
○名月や福守護神の白象図
○名月や引戸にうつす庭の円
○名月や敷石の角をれにけり
○名月やうかがいしれぬ足の裏
○名月や足裏のよき心地なり
良夜
○英国の母性のごとき良夜かな
○簡素なる建具に密の良夜かな
花火
○揚花火よるのすべてを映しけり
月代
○月代や八百万神狩りやすみ
鈴虫
○鈴虫や振りて料理のおしつらい
蜉蝣
○蜉蝣や老舗のティーの人付き合い
芋虫
○芋虫や解放されてレストラン
相撲
○おほらかに夢つかみたる相撲かな
○秋場所にさもおおらかな力士かな
夜長
○長き夜やたびの手帖の読み終える
夜学
○夜学日やひとかたまりに飴細工
○かたわらにタイムトリップ夜学の日
○夜学日や窓にゆきかふ人小さき
○独りやる声にしたしき夜学かな
蚯蚓鳴く
○ひたすらに捏ねて会話や蚯蚓鳴く
轡虫
○新免の武蔵塚なり轡虫
馬追
○馬追や宗達の筆雲はしる
水澄
○水澄みて見所おおき和のこころ
○水澄みて見かけることもなかりけり
○水澄みて版木の白にしろ地がら
名月
○名月やたぐいまれなる息のなか
眠流し
○ひとがたの眠流しや火のともる
秋の水
○秋水や長ながしけり月詣り
○秋水やコスメデビユのご要望
雪
○昼の雨令和の雪となりにけり
○貧しさの雪にいかだや昼の雨
○またひとつ眠りの雪に落ちにけり
○名言のなきひとのよや夜の雪
メロン
○愛のある二人のメロンおいしいもん
○メロン切るおやつのはしごロールケーキ
○税込のるすばん猫やメロンしばし
○よるひとりメロンや明日もバスにのる
○明るめの髪の座席やメロンの香
○たまに合ふ洗濯のあとメロン切る
○同棲のおわりもみえてメロン切る
鰤
○小さきの波やしづかに鰤の膳