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夏の雲
○夏の雲テーブルクロス如くあり
○夏の海遠くの果てに小休止
桜
○けふばかりひとり暮らしの桜かな
○菰に野に花は桜の遊行かな
○物申す夢や熊野の山桜
○四方より風になりける桜かな
○夜のふけてわづらふ果の桜かな
○野の露の消えて姉妹の桜かな
○義仲の理をしる山桜
○玉の床われて泪の桜かな
○かたなくも讃岐の院の桜かな
○一本の暮れて桜や崇徳院
若布
○つれなくも湯をくぐらする若布かな
○名付ければ俺のわかめといふやべき
○美しく皿に若布の盛られたり
○ざわめいて店に若布の青さかな
○鎌倉に旗揚げしたり若布売り
○手の上になんと可憐や若布売り
桃
○としごろの桃にふれあふかたちかな
○尖らせて手にやはらかき毛桃かな
○桃の実やつんつんとしてならびたる
天道虫
○エナメルの鞄やひらくむてんとむし
○エナメルの鞄や畳むてんとむし
○可愛らしい配達員よてんとむし
○指先と指さきのぼるてんとむし
柳
○阿弥陀仏柳の下に僧やあり
○無常なるそれでもけふも柳かな
トマト
○ベランダのけふもトマトや月の下
○五年の庵の庭に蕃茄かな
花火
○手花火やくちびる赤き女の子
落葉
○一編の落葉やいまは自由なり
白魚
○白魚やけがさぬ恋のつらぬける
○白魚の目に満月や波の音
○白魚やはるか異国をおもふなり
○白魚や朝日を吸ふてばかりなり
○しら魚や吸て朝日のあさぼらけ
○白魚の桶のにごりを愛すなり
大根
○富士山に大根描いた良き日かな
一茶忌
○一茶忌に皆で鳥獣角力かな
ストーヴ
○ストーヴや隣の人の肘あたり